隣の家でシロアリ駆除が始まった、あるいは近所で羽アリが大量発生したといった状況で、シロアリ駆除と隣の家との関係を心配されていませんか。 「うちにもシロアリが飛んでくるのでは?」「薬剤がうちまで来るのでは?」という不安は、時として近所トラブルの原因にもなりかねません。
特に、シロアリの移動時期である春先から初夏にかけては、羽アリの群れを目撃する機会も増えます。 マンションであってもシロアリが飛んでくるのではないか、外から入ってくるのではないかと気になるものです。
シロアリはどこの家にもいる可能性があるため、たとえブロック塀で隔てられていても、安心はできません。
また、現実的な問題として、そもそも自宅がシロアリ駆除を近所に言うべきか、もし隣家が駆除を行う場合、薬剤による洗濯物への影響はないか、といった疑問も尽きないでしょう。
この記事では、シロアリがいる家の特徴や、シロアリが飛んでくる場合の具体的な対策、そして隣家との関係性について、シロアリの生態に基づいた専門的な視点から詳しく解説します。 不安を解消し、適切な行動を取るための一助となれば幸いです。
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隣の家からシロアリが移動・飛来する可能性
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シロアリが家に侵入する主な経路と対策
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隣家が駆除する際の近所への伝え方と注意点
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シロアリ被害を受けやすい家の環境的な特徴
シロアリ駆除!隣の家から逃げてくる?
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シロアリが外から入ってくる主な経路
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羽アリが飛んでくる対策と実際の被害
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シロアリの移動時期と活動の習性
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マンションでもシロアリは飛んでくる?
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ブロック塀はシロアリの移動を防ぐ?
シロアリが外から入ってくる主な経路

「隣の家からシロアリが逃げてきた」「飛んできた」と心配される方は非常に多いですが、住宅に被害をもたらすシロアリの侵入経路として、最も一般的で警戒すべきなのは、地面の下、つまり「土の中」からです。
日本国内のシロアリ被害の大部分は、「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」という2種類の「土壌性シロアリ」によって引き起こされます。彼らはその名の通り、基本的に湿った土の中で生活し、コロニー(巣)を形成します。
彼らが住宅に侵入する際、地上を歩いてくることはありません。 なぜなら、シロアリは光や乾燥に非常に弱いためです。
そこで彼らは、土や木材のカス、自らの排泄物などを固めて「蟻道(ぎどう)」と呼ばれる専用のトンネルを作ります。 この蟻道を地中から建物の基礎まで伸ばし、安全に床下へと侵入します。
- 基礎コンクリートのひび割れ : わずかな亀裂でも、シロアリは通り道として利用します。
- 配管・ケーブルの貫通部 : 基礎に水道管やガス管、電線などを通すために開けた穴と、管との間に生じるわずかな隙間は、格好の侵入ポイントです。
- 床下の通気口 : 通気口の金網が壊れていたり、目が粗かったりすると、そこから侵入することがあります。
- 地面と直接接する木材 : ウッドデッキの支柱や、庭に設置した木の杭、花壇の仕切りなどが地面に直接触れていると、シロアリはそこを餌場兼通り道とします。
- 増改築部分の継ぎ目 : 新旧の基礎が接合する部分は、構造的に隙間ができやすい場所です。
このように、シロアリが外から入ってくるというのは、多くの場合、家の外の「地中」から「床下」へ侵入することを指します。
ただし、ごく稀な例外として「アメリカカンザイシロアリ」のような乾材シロアリが存在します。 これは北米原の外来種で、その名の通り乾燥した木材にも被害を与えます。彼らは土壌を必要とせず、羽アリが飛来して窓の隙間などから侵入し、そのまま柱や家具などの木材に直接穴を開けて巣を作ることがあります。
しかし、この種類は生息エリアが局所的(輸入家具の多い港湾地域など)であり、ほとんどの被害は前述の土壌性シロアリによるものです。
羽アリが飛んでくる対策と実際の被害

春先から初夏にかけて、シロアリの羽アリが飛んできて、網戸に張り付いたり、開けた窓から自宅の室内に入ってきたりすることは実際にあり得ます。 しかし、その羽アリがすぐに家の中に巣を作り、被害を発生させる可能性は極めて低いと考えられます。
その理由は、日本の在来種であるヤマトシロアリやイエシロアリが新たな巣を作るための「条件」が、一般的な住宅内には揃っていないからです。
彼らが巣を作り始めるには、適度な湿気を含んだ朽木や、湿った土壌といった自然環境下が必要です。 一般的な住宅の室内は、彼らが生存し、コロニーを築き始めるにはあまりにも乾燥しています。
羽アリの多くは、飛び立った後、地上に降りて羽を落とし、オスとメスがペアになって営巣場所を探します。 しかし、飛び立った羽アリの大多数は、アリや鳥などの天敵に食べられたり、適切な場所を見つけられずに力尽きたりします。
運良くペアになれたとしても、まずは湿った土中や腐葉土、木の根元などに潜り込み、安全な環境で女王と王として最初の小さな巣(初期コロニー)を構築し始めなければなりません。
したがって、飛んできた羽アリが、リビングのフローリングや柱をいきなりかじり始めるわけではないのです。
羽アリの侵入を物理的に防ぐための対策としては、以下のような方法が挙げられます。
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網戸や通気口の点検・交換 : 羽アリは体が小さいため、破れや隙間はもちろん、目が粗い網戸も通り抜けることがあります。 可能であれば24メッシュ(1インチ四方に24個の網目)以上の細かい網戸に交換するのが理想です。
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夜間の窓開けを控える : 特にイエシロアリは夕方から夜間に活動し、光に集まる習性があります。 群飛時期(6月~7月頃)の夜間は、不要な窓開けを控えるのが賢明です。
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屋外照明の変更 : 光に向かって飛ぶ習性を利用し、屋外の照明(玄関灯や庭園灯)を、虫が寄りにくいとされるLEDライト(紫外線や熱をあまり出さないタイプ)に変更するのも一つの方法です。
シロアリの移動時期と活動の習性

シロアリの「移動時期」として私たちが唯一、目視できるのが、主に春から夏にかけて発生する「群飛(ぐんぴ)」です。 これは、成熟したコロニー(巣)が、子孫繁栄と生息範囲拡大のために、生殖能力を持つ新たな王・女王候補(羽アリ)を外部の世界に一斉に送り出す「巣別れ」の行動です。
シロアリの種類によって、この群飛の時期や活動する時間帯が明確に異なります。 ご自宅や近所で見かけた羽アリがいつ、どのような時間帯に飛んでいたかによって、どのシロアリが近くにいるのかを推測できます。
| シロアリの種類 | 主な群飛(移動)時期 | 活動時間帯 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| ヤマトシロアリ | 4月~5月頃 (ゴールデンウィーク前後) | 日中 (特に午前中~日中) | ・日本全土(北海道北部除く)に生息 ・羽アリは黒っぽい体色 |
| イエシロアリ | 6月~7月頃 (梅雨時期) | 夕方~夜間 | ・温暖な沿岸部(関東以南)に生息 ・羽アリは茶褐色 ・光(電灯)に集まる習性がある |
| アメリカカンザイシロアリ | 6月~9月頃 | 日中 (群飛はダラダラと続く) | ・局所的に生息(外来種) ・羽アリは赤褐色~黒褐色 |
特に、「雨が降った翌日に、急に気温が上がって蒸し暑くなった日」は、羽アリが飛び立つ条件が整いやすく、群飛が発生しやすい傾向にあります。 これは、羽アリが飛び立ちやすく、また着地した先の土壌が営巣に適した水分を含んでいるためと考えられます。
重要なのは、この羽アリが飛び立つ「移動時期」以外は、シロアリが地上を移動することはほとんどないという点です。 しかし、巣の中にいる大多数の働きアリ(職蟻)や兵隊アリ(兵蟻)たちは、地中や木材の内部で季節を問わず年中活動し、餌となる木材を運び続けています。
冬場は気温が下がるため活動が鈍ることはありますが、家の床下や地中など、温度が比較的安定した場所では活動を止めることはありません。 羽アリを見かけない時期でも、被害が静かに進行している可能性は常にあるのです。
マンションでもシロアリは飛んでくる?

「マンションだからシロアリは関係ない」と考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらマンションであっても、シロアリが飛んでくる可能性や、被害に遭うリスクはゼロではありません。
まず、羽アリの飛来に関して言えば、高層階であっても安心はできません。 羽アリは体こそ小さいものの、風に乗ればかなりの高さまで到達することが可能です。
実際に、上昇気流に乗ってマンションの10階以上で羽アリが目撃されたり、ベランダや開いた窓から室内に入ってきたりするケースは十分に考えられます。
前述の通り、飛来した羽アリがすぐに室内の乾燥した環境で巣を作る可能性は極めて低いです。 しかし、侵入の「機会」という点では、戸建て住宅と同じようにリスクがあることを認識しておく必要があります。
一方で、より現実的な被害リスクとして注意が必要なのは、1階や地面に近い低層階です。
マンションは鉄筋コンクリート(RC)造だから安心、とは言い切れません。 シロアリはコンクリート自体を食べることはありませんが、経年劣化によるコンクリートのわずかなひび割れや、建築時に作られた配管を通すための隙間、打ち継ぎ部分(コンクリートを複数回に分けて流し込んだ境目)などから内部に侵入することができます。
特にマンションの1階部分は、床下が土壌やコンクリートスラブ(床版)の上に直接、木製の下地材や床材(フローリングなど)が敷かれている構造が一般的です。 一度シロアリがこの床下に侵入すると、そこは気密性や保温性が高く、シロアリにとって非常に快適な環境となります。
結果として、戸建て住宅よりも発見が遅れやすく、気づいた時には床材や下地材に被害が広がっていた、というケースも実際に報告されています。
ブロック塀はシロアリの移動を防ぐ?

隣家との境界に設置されているブロック塀は、残念ながらシロアリの移動を完全に防ぐ障害にはなりません。
シロアリは基本的に地中を移動する昆虫です。彼らにとってブロック塀は、その基礎の下をくぐり抜けて迂回すればよいだけの障害物に過ぎません。
それどころか、ブロック塀の構造がシロアリの移動を助けてしまうケースさえあります。
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内部の空洞 : ブロックの内部にある空洞は、シロアリにとって外敵や乾燥から身を守れる安全なトンネル(蟻道)として利用されることがあります。
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ひび割れ・水抜き穴 : 経年劣化によるひび割れや、元々設けられている水抜き穴も、格好の通り道となります。
ただし、隣家からシロアリが移動してくるリスクの度合いは、生息しているシロアリの種類によって大きく異なります。
そのため、隣家とよほど密接している(建物同士が数メートルしか離れていない)狭小地などでない限り、隣のヤマトシロアリがわざわざブロック塀を越えて自宅まで来る可能性は低いと考えられます。
その行動範囲は半径100メートルに達することもあるとされています。 半径100mというのは、複数の家屋をまるごとカバーできるほどの広さです。
この場合、ブロック塀の存在は全く意味をなさず、隣家で発生したイエシロアリが、地中深くを通って自宅の敷地内に侵入してくる可能性は十分にあります。
シロアリ駆除と隣の家への配慮
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シロアリ駆除を近所に言うべき理由
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回避したいシロアリによる近所トラブル
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シロアリ駆除で洗濯物への影響は?
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シロアリがいる家の特徴と環境
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シロアリはどこの家にもいる可能性
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シロアリ駆除は隣の家より床下点検
シロアリ駆除を近所に言うべき理由

自宅でシロアリの被害が見つかり、駆除を行うことが決まった場合、可能であれば近隣の家(特に両隣や裏の家)に事前に一言伝えておくことが推奨されます。
シロアリ駆除を近所に報告する法律上の義務は一切ありません。 しかし、良好な近所関係を維持し、不要な誤解やトラブルを未然に防ぐ「マナー」として、事前の声掛けは非常に有効です。
もし何も伝えずに作業を始めると、近隣の方はどう感じるでしょうか。
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「業者の車が停まっているけど、何の工事だろう?」
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「床下で何か作業している音がする…」
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「薬剤の臭いがする気がするけど、体に害はない?」
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「もしかしてシロアリ?うちにも移ってきたらどうしよう…」
このように、事情がわからないと人は不安を感じ、時には憶測から不信感につながることもあります。 特に「シロアリ」という言葉は、「うちにも移るのではないか」という強い不安を喚起させやすいものです。
作業の前に、以下のような内容を簡潔に伝えておくだけで、近隣の方の心証は大きく変わります。
- 挨拶と作業の通知 :「○月○日(○曜日)に、自宅のシロアリの予防(または駆除)作業を行います」
- 作業時間(目安) :「作業は午前中(または○時頃)から○時間程度の予定です」
- 業者名 :「○○(業者名)という会社が行います」
- 配慮の一言 :「当日は業者の車が停まったり、作業音がしたりとご迷惑をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いします」
このように、事前に誠実な対応をしておくことが、無用な心配やクレームを防ぐ最も確実な方法となります。 専門業者によっては、近隣への挨拶を代行してくれたり、挨拶用のチラシを用意してくれたりする場合もありますので、相談してみるのも良いでしょう。
回避したいシロアリによる近所トラブル

シロアリに関する近所トラブルで最も頻繁に聞かれるのは、「お宅が駆除をしたせいで、うちにシロアリが逃げてきた」または「お宅から出た羽アリが飛んできて、うちに被害が出た」といった、シロアリの生態に関する誤解から生じるものです。
1. 「駆除でシロアリが逃げてきた」という誤解
隣家がシロアリ駆除をした直後に、タイミングよく自宅でシロアリ被害が見つかると、「薬剤から逃げてきたに違いない」と考えがちです。 しかし、この可能性は極めて低いと言えます。
なぜなら、現在のシロアリ駆除で使用される主流の薬剤は、効果がゆっくりと現れる「遅効性」であり、仲間に薬剤を伝播させる「伝播性」を持っているためです。
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薬剤に触れたシロアリはすぐには死にません。
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薬剤が付着したシロアリが巣に戻ります。
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シロアリには、お互いの体を舐め合う(グルーミングする)習性や、口移しで餌を分け与える習性があります。
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この習性によって、薬剤がドミノ倒しのように巣の中の他のシロアリ(女王や王、幼虫など)に次々と広がっていきます。
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結果として、巣全体がゆっくりと、しかし確実に駆除されます。
このように、シロアリがパニックになって薬剤から一斉に逃げ出し、隣の家に大移動するといった事態は、現代の駆除方法では考えにくいのです。 もし被害が見つかったとすれば、それは元々ご自身の家の敷地内(土壌)にいたシロアリのコロニーが、たまたま同じ時期に発見された、と考えるのが最も妥当です。
2. 「羽アリが飛んできた」という誤解
前述の通り、羽アリが飛んできて、新しい巣を作り、それが建物に被害を与えるほどの大きなコロニーに成長するまでには、数年単位の長い時間がかかります。 また、飛び立った羽アリのほとんど(一説には99%以上)は営巣に成功できずに死んでしまいます。
したがって、「昨日、隣から羽アリが飛んできたから、今日うちの柱が食べられた」ということはあり得ません。 もし被害が見つかった場合、それは数年前に飛来した羽アリによるものか(特定は困難です)、あるいは何年も前から地中に潜んでいたシロアリが活動を活発化させたと考えるべきです。
シロアリ駆除で洗濯物への影響は?

隣家がシロアリ駆除を行うと聞いた際、特に気になるのが「薬剤が飛んできて、外に干している洗濯物に付着しないか?」という点でしょう。
結論から言えば、その可能性は低いものの、ゼロではありません。
現在、シロアリ駆除に使用される薬剤は、その多くが(公社)日本しろあり対策協会によって認定された、人体やペット、環境への影響が最小限になるよう配慮された安全性の高いものが主流です。 これらの薬剤は毒性が低く、揮発しにくい(蒸発しにくい)ように作られています。
また、施工方法も、薬剤が外部に飛散しにくいよう配慮されています。
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床下散布(バリア工法) : 最も一般的な方法で、薬剤の大半は密閉された床下空間の土壌や木部に散布されます。
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養生 : 床上(室内)の点検口から作業する際は、周囲に薬剤が飛び散らないよう、ビニールシートなどでしっかりと養生を行います。
しかし、以下のようなケースでは、微量の薬剤が外部に影響する可能性も否定できません。
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風が非常に強い日に施工する場合
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玄関周りや勝手口など、屋外の木部に薬剤を処理する場合
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使用する薬剤の種類が揮発性(蒸発しやすい)のものであった場合
そのため、最も安心な対策は、隣家が駆除を行う当日は、洗濯物を室内干しに切り替えることです。 もし事前に日程がわかっているのであれば、そのように対応するのが最も賢明です。
どうしても外干しをしたい場合は、施工が終わってから半日~1日ほど時間を空け、風向きなどを確認してから干すとよいでしょう。 万が一、薬剤の臭いが洗濯物に移ってしまった場合でも、通常の洗濯(再洗濯)で洗い流せるとされています。
シロアリがいる家の特徴と環境

シロアリは、特定の条件が揃った家、つまり彼らにとって「住みやすい家」を好んでターゲットにします。 隣の家を心配する前に、ご自宅がシロアリにとって魅力的な環境になっていないか、以下の特徴を確認することが非常に大切です。
1. 湿度が高く、風通しが悪い
シロアリは皮膚が薄く、極度の乾燥に弱い生き物です。そのため、常にジメジメした場所を好みます。
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床下の換気が悪く、土壌が常に湿っている。
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床下換気口の前に物置や植木鉢、エアコンの室外機などを置いて、風の流れを妨げている。
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浴室や台所、トイレなどの水回り(特に床下)の湿気が高く、結露しやすい。
2. 雨漏りや水漏れを放置している
屋根や外壁からの雨漏り、あるいは給排水管からの水漏れは、シロアリにとって最大のごちそうです。 木材が水分を含むと、シロアリが食べやすくなるだけでなく、木材を腐らせる「腐朽菌」も発生しやすくなります。シロアリはこの腐朽菌も好むため、被害の進行が加速します。
3. 家の周囲に餌となる木材がある
シロアリの主食は木材(に含まれるセルロース)です。家の周りに餌となるものが放置されていると、シロアリを呼び寄せる原因となります。
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庭に古い切り株や枕木、使わなくなった廃材を放置している。
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ウッドデッキやラティス(木製フェンス)の支柱が、地面に直接触れている。
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家の基礎周り(換気口の近くなど)に、濡れやすい段ボールや新聞紙の束を置いている。
4. 建物に隙間やひび割れがある
前述の通り、シロアリが地中から侵入するための物理的な入り口です。
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基礎コンクリートの表面に、経年劣化や地震によるひび割れ(クラック)がある。
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配管を通すための穴と管の間に隙間が空いている。
- □ 新築または前回の防除から5年以上経過している
- □ 床下の風通しが悪い、または換気口を塞いでいる
- □ 浴室や台所がタイル張りで、壁や床にひび割れがある
- □ 雨漏りや水漏れの跡がある、または放置している
- □ 家の周りに不要な木材や切り株を置いている
- □ ウッドデッキや縁側が地面に接している
- □ 基礎にひび割れが見られる
シロアリはどこの家にもいる可能性

「隣の家でシロアリが出たから、うちにも来るかもしれない」という心配は、「隣の家でインフルエンザが出たから、うちにもうつるかもしれない」という感覚と似ているかもしれません。
しかし、シロアリに関しては、少し認識を変える必要があります。
シロアリは、もともと日本の(北海道の一部を除く)土壌のどこにでも普通に生息している昆虫です。 彼らは外来の害虫ではなく、古くから日本の自然環境に組み込まれています。
本来の役割は、森の中で枯れた木や倒木を分解し、土に還すという「分解者」としての非常に重要な役割です。
私たちが住んでいる住宅地も、元をたどれば森や野原、山林であり、シロアリは昔からそこに住んでいます。 つまり、「隣の家からシロアリが来る」のではなく、「ご自身の家の敷地内の土壌にも、元々シロアリがいる可能性が非常に高い」のです。
庭の手入れで古い切り株をどけたら、シロアリの集団がいて驚いた、というケースは珍しくありません。 シロアリは常に土の中で餌を探しており、家の木材は彼らにとって格好の餌場です。
新築時には土壌や木材に薬剤処理(防蟻処理)が施されているため、シロアリは侵入できません。 しかし、その薬剤の効果も一般的に5年程度で薄れていきます。
薬剤の効果が切れ、家の木材が湿気を含むようになると、元々あなたの家の敷地内の地中にいたシロアリが、「ここに餌がある」と気づいて侵入してくるのです。
シロアリ駆除は隣の家より床下点検

隣の家でシロアリ駆除が始まると、不安になるお気持ちはよく分かります。 しかし、この記事で解説してきたように、隣家からの影響を過度に心配するよりも、ご自身の自宅の状況を正しく把握することの方がはるかに重要です。
隣家が駆除を始めたという事実は、「この地域はシロアリの活動が活発である」というサインとして受け止め、ご自宅の床下点検を行う絶好の機会と捉えるのが賢明です。
この記事の重要なポイントを以下にまとめます。
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隣の家でシロアリ駆除が始まっても、自宅に逃げてくる可能性は極めて低い
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現在の駆除薬剤は、巣ごと全滅させる遅効性・伝播性のものが主流
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シロアリの主な侵入経路は、隣家からではなく自宅の床下(地中)から
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外から入ってくる羽アリが、室内に直接巣を作る可能性も非常に低い
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羽アリが営巣するには、湿った土壌や朽木といった特定の環境が必要
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ヤマトシロアリの群飛(移動時期)は4月~5月の日中
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イエシロアリの群飛(移動時期)は6月~7月の夜間で、光に集まる
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イエシロアリは行動範囲が半径100mと広いため、ヤマトシロアリより注意が必要
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マンションであっても1階や低層階は地中からの侵入リスクがある
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高層階でも羽アリが飛んでくる可能性はある
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ブロック塀はシロアリの侵入を完全には防げない
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シロアリは日本の土壌に広く普通に生息している
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「隣家から来る」のではなく、「元々自宅の敷地内にいる」可能性が高い
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シロアリは湿気が多く風通しの悪い環境を好む
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家の周りの廃材や切り株、雨漏りや水漏れの放置はリスクを高める
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自宅が駆除する際、近所に一言伝えておくことは不要な近所トラブル防止につながる
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隣家が駆除する当日は、洗濯物を室内干しにするのが最も安全な対策
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最も重要な対策は、隣の家を心配することより、自宅の定期的な床下点検を行うこと